積みゲー崩しと備忘録のようなもの

ひたすらゲームの感想を残すブログ

Her Story

store.steampowered.com

細切れになった映像から、ある女性の証言を聞くゲーム“Her Story”の感想です。

 

一言感想:映像で紐解く『彼女』の物語。

 

ゲームについて

1994年に起きた、とある事件の取調室での映像がデータベース化されています。
映像に映っているのは1人の女性。
"彼女"視点の映像は残っておらず、刑事が彼女に何を質問しているのかはわかりません。

映像は全て数秒~1分強くらいの長さで細切れになっており、検索窓に単語を入力することでその言葉を含む映像を5つまで閲覧することができます

 

・日本語音声……なし。英語のみです。
・日本語字幕……あり。
・主人公……映像に映る女性。名前を名乗る動画もいくつか出てきます。

映像を全て見た時点でのプレイ時間は4.5時間でした。

 

感想(※この先ネタバレあり)

※この先はネタバレとなります。
動画を観るのに夢中になりすぎてスクショは今回ほとんど撮っていなかった&撮っている場面の台詞もかなりネタバレなのでこれ以降は文字のみです。

物語の真相・起きた出来事等を整理しつつの考察となりますので未プレイ・未クリアの方はご注意ください。

 


想像していた方向のミステリーではありませんでしたが、楽しかったです。
最初は映像に映る女性のことも、どうしてその女性が警察にいろいろ語っているのかも全くわからないまま何度も検索を繰り返し、「さっき話に出てきた人がこの人の名前なのか」「待てよ、じゃあ少し前に名前が出てきたあの人は一体……?」と手探りで話を聞いていった先で突然すべてのピースが埋まるあの感覚。
確かに”新感覚”だと感じました。
“彼女”の物語を『見て』『知る』体験。
字幕で「名前はハナよ」と説明してくれているのですが、最初のうちは“ハナ”という別の登場人物が居るのかと思ってしまっていました。
「名前はハナよ」の動画を改めて視聴したところ、音声で「(私の)名前はハナよ」と言っていると気づいたことからようやく画面上の人物が“ハナ”なのだと理解。

 

事件の全容自体は思っていたよりも早い段階で解明できました。
話者の正体、半生、今回の事件が起きた経緯、犯人。
その時点でゲームをクリア(?)することは可能だったのですが、結局データベースを全て埋めるまで“彼女”の話を聞くことに没頭しました。
発見したデータベースを後で自由に観返すことのできる機能が残念ながら無いため、最後5~6つくらいになってからは行き詰まって先人の知恵(攻略情報)に頼ってしまいました。

 

実は、彼女たちの真相がある程度わかってクリア可能な状態になっても、察しの悪いわたしはまだピンときておらず話者が“どちら”なのか考えていました。
その段階になってから半袖の服を着ている日の映像を見比べて初めて、……あっ!タトゥ入ってる日と入っていない日がある!ってことは話者は1人じゃなくて2人、2人が交代して取り調べを受けているんだ……と気づきました。
日によって好んで飲む飲み物にも違いがあったんですね。
どうやら紅茶を飲むのはハナ、コーヒーを飲むのはイヴのようです。
ハナはギターを「弾けない」と断言しますが、イヴは刑事の前で「あまり上手じゃないけど」と言いながらもギターを弾き、歌を歌ってくれます。
この短い期間の中で撮られた数本の動画だけでもハナとイヴにはそれぞれ別の個性があり、別人であることが容易に想像できてしまいます。
いえ、むしろ、「良く17になるまで入れ替わりで『1人のハナ』であると両親や周囲を欺くことが可能だったな……」と思ってしまうほど。
両親はイヴを死産だったと思っているのでまさか同じ顔の子がもう一人居るなんて思いもしなかったでしょうが、それにしたって取り調べ時の2人のようなやり取りを長年続けていれば二重人格を疑うくらいの違和感はありそうなものですが……。

"イヴ"が具体的に一体何をやったのかはわかりません。
映像を観るだけのわたしたちにわかることは、"イヴ"は身籠っていた子を無事に産んだこと、そして彼女は今、実の子供と連絡を取れる状況下に無いのだろうということ。
イヴに何があったのかはわかりませんが、"サイモンとの赤ちゃん"を欲しがっていたハナは最後の事情聴取の時点で失踪(?)しており、17の頃のイヴが赤ちゃんを欲しがったのは”ハナと同じになるため”であり今回の妊娠は望んでのことではなかった&一緒に育てようと言っていたハナは居なくなったので、彼女(イヴ)が子育てをする意思や理由は初めから無かったのかもしれないなと思っています。生まれた子(サラ)からすればあまりに酷い憶測ですが。
例えば、生んですぐにイヴが失踪→子供は施設へ→大きくなった子供が出自について調べる→当時の事件記事が出てくる→紆余曲折を経て警察のデータベースへのアクセス権を得る、という流れから今回の物語が始まった可能性もあるのかなと推測しています。
もし本当にそうであれば、本当の母から愛されることのなかったイヴが自らの子に対しても同じことをしてしまった悲しい物語だなと思います。
ハナとイヴの話を聞いていると、イヴのほうが若干ハナよりも社交的で人間に愛されそうなタイプに見えるのですが、自分の心の拠り所と存在価値のすべてを片割れであるハナに求める姿はいつまでも自分自身という存在を認められない気持ちの表れのようで哀しかったです。
大人になってやっとハナから離れて別人として生きようとしたのに、結局“イヴ”としての人生を得られないままここまで来てしまったんだなあと……。

 

……ちなみに、2人が取り調べ中に机を指先で叩いていたのはお互いが使っていた“暗号”(モールス信号でしょうか?)らしく、解読するときちんと意味のある英単語になるそうです。

 

ちょっと残念に感じた点は2点ほど。
・クリア後でもいいのでデータベースチェッカーから今まで観た動画を全部観れたら嬉しかったなぁと思いました。時系列順に並べて最初から観たい。

・日本語は漢字・カタカナ・ひらがながあるので少し面倒。猫はネコ、眼鏡は眼鏡の場合とメガネの場合あり。できれば統一してほしかった。

 

雰囲気とハナ&イヴ役をされていた方の演技が非常に素晴らしかったので、最後まで飽きずに遊ぶことができました。
今回と同じ手法の作品がその後も出ているようなので少し気になっています。
ただ、該当作品のレビューを見たところ、細切れで推理し物語を繋げていくHer Storyと違って次の作品は動画の時間が長くなっておりテンポが悪くなっているとの指摘もありました。
機会があればいつか遊んでみたいです。